理想の文章を書くために必要なもの




「理路整然とした文章を書きたい」
「人を惹きつける文章を書きたい」
「『面白い』と言われる文章を書きたい」

そう思う人は多いはず。

理想の文章が書けるようになるには、まず、文章はどのようなプロセスを経て出来上がっているかを知ることが大切です。
そうでなければ、なぜ理想とする文章が書けないのか“の原因を見つけることができません。
問題解決は、問題を見つけることから始まります。思うような文章が書けないのであれば、その原因を知り克服することが文章上達への近道となるのです。





文章が出来上がるまでには3つのプロセスを経ます。
その3つとは、『インプット⇒思考⇒アウトプット』です。
それぞれに役割があり、この中の1点でも欠けると、文章は粗末なものになってしまいます。

これから一つずつ説明していきますので、自分の文章には何が足りないのか、考えながら読み進めてください。






何にしても、書くネタがなければ書くことはできません。人は知り得た情報の中からでしか文章は書けないからです。インプットとは、何も本を読んだり、ネットで調べたりするばかりではありません。見聞きしたことなどの経験もすべて含まれます。
常日頃から何かを見て聞いて触れて感じていなければ、いつか話のネタが尽きてしまいます。文章を書き続けるためにも、インプットし続ける必要があるのです。

ただ、同じ経験をしても、誰もが同じインプットをするわけではありません。同じ映画を観ても、皆が同じ感想を持つわけではないように、人によって経験から得る情報にも差が生じます。人によって着目している点や解釈が違うからです。
こうした個々の持つ着目点や解釈の違いによって、同じ情報に触れたとしても、異なったインプットがされます。 別の言い方をすれば、すべての情報は個々が持つフィルターを通してインプットされるのです。この差異は一生涯続きます。

個々が持つフィルターの違いがインプットにも差異をもたらし、最終的には、文章の内容にも影響を与えます。当然、人とは違う着目点を持ち、変わった解釈をする人のほうが、人の目を引く文章になりえるでしょう。

では、人とは違う着目点を持つようになるには、どうしたらいいのか? 実は、その鍵もインプットにあります。

大衆が触れている情報ばかり漁っていると、大衆と同じ着目点しか持てません。反対に、大衆とは違う情報に触れていると、大衆とは違う着目点を持つようになり、大衆とは異なった解釈ができるようになります。


私は映画を見ているとき、「このカメラのアングルは絶妙だなぁ〜」「このシーンをこのアングルで撮るには勇気がいっただろうな」と感心しながら見ています。おそらく多くの人は気にしない点です。なぜカメラアングルに目が行くのかと言うと、写真を趣味にしているからです。そのため、カメラアングルには自然と目が留まってしまうのです。つまり、写真撮影の経験があるからこそ生まれる着目点なのです。

このように今までしてきたインプットにより視点が増え、人とは違う着目点を見い出すのです。






文章を書く際、どう書こうかと思考します。思考を分解すると、論理と発想になります。
理路整然とした文章を書くには論理力が必要であり、面白い着想の文章を書くには発想力が必要です。
では、この2つをそれぞれ解説していきます。


《論理力》
ある一定の論理力がなければ、人に伝わる文章は書けません。
論理力とは、情報を分解、整理し、道筋を立てて、意見や考えを組み立てる力です。
難しい話を論理的に分かりやすく書ける人は、それだけで評価されます。
私の好きな三橋貴明氏や池上彰氏がそれにあたるでしょう。複雑な話も分かりやすく解説してくれて、とても助かります。


ここで私が論理力について言及するよりも、論理的な文章の書き方を覚えるほうが身になります。
ではここで、論理的な文章が書けるようになる文章構成を紹介しましょう。
私がよく用いる文章構成でもあり、論理力を鍛えるにも効果的です。
ぜひ、試してみてください。以下がその文章構成です。

お!(タイトル)
何々(概要)
へぇ〜(意見)
なるほど(証拠)
わかった(結論)

例文を紹介しますね。


この文章構成で書けば、ある程度は論理的かつ分かりやすい文章が書けるはずです。




次に、論理力を鍛える方法を紹介します。それは、図で考えることです。
以下の5つの図を用いれば、論理的に考えられ、同時に論理力も鍛えられます。

1、マップ
2、マトリクス
3、プロセス
4、グループ
5、サイクル



何かを考える際は、図で考えるように心がけてください。
それだけで、論理力は自然と鍛えられるのです。


話は少し変わりますが、論理力は何も文章を書く際だけに必要なのではありません。
論理力がなければ、偏った情報、または誤った情報を鵜呑みにしてしまいます。世の中には、客観的で中立な情報というものは極めて少ないのです。
個人が発信する情報には主観や感情が入り、マスコミが発信する情報には思惑が入ります。主観や感情や思惑などが、事実と入り交じり発信されているのです。それらの情報を整理、分解できなければ、誤った情報を受け取ってしまい、それを元に情報を発信してしまいます。
論理力は、情報を取捨選択するためにも必要なのです。


《発想力》
発想力があれば、人から「面白い」と言われる文章が書けます。
発想力とは、既存のものと異質なものを組み合わせられる力です。


たとえば、一時流行った「もしドラ」は、ドラッカーの書いた有名なマネジメント書を野球部のマネージャーの立場から解説するという切り口が斬新でした。これは、ドラッカーのマネジメント×野球部のマネージャー“という組み合わせです。


発想豊かな文章を書くコツは、本題をそのまま料理しないことです。異質なものと組み合わせて、今までにない切り口で本題を語ることが大切です。

もう一つ、紹介したい例文があります。
西原理恵子氏が書いた、朝日新聞のコラムの「いじめられている君へ」です。短文ですので、お読みください。


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■上手にうそをついて

 うそをついてください。

 まず仮病(けびょう)を使おう。そして学校に行かない勇気を持とう。親に「頭が痛い」とでも言って欠席すればいい。うそは、あなたを守る大事な魔法(まほう)。人を傷つけたり盗んだりするのでなければ、うそって大事よ。これからも、上手(じょうず)にうそついて生きていけばいいんだよ。

 亡くなった夫は、戦場(せんじょう)カメラマンでした。戦場で銃(じゅう)を突きつけられたことが何度もあったけど、一番怖(こわ)かったのは、少年兵だって。

 大人は残酷(ざんこく)な兵士にもなるけど、家に帰ったらやさしいお父さんにもなる。愛することや大事なものを知ってるから。でも、少年兵は物事の重大さが分からず、簡単(かんたん)に人を殺しちゃうんだって。生前(せいぜん)にそう言っていました。子どもってそういう生き物。「子どもなのになぜ?」って思うかもしれないけど、戦場の理屈(りくつ)だと、そうなんだって。

 いくら紛争地帯(ふんそうちたい)でも、年間3万人も死ぬことはそんなにありません。でも、日本ではそれくらいの人々が自殺しています。そう、この国は形を変えた戦場なんです。戦場では子どもも人を殺します。しかも、時には大人より残酷になる。

 学校は、いじめられてつらい思いをしてまで行くようなところじゃない。長い夏休みだと思って、欠席してください。そして、16歳まで生き延びてください。

 高校生になれば、通信制(つうしんせい)高校やフリースクール、いわゆる大検(だいけん)など選択肢(せんたくし)が広がります。何よりもアルバイトができる。お金をもらいながら、社会人にふさわしい訓練(くんれん)を受けられます。お金を稼(かせ)ぐということは自由を手に入れるということ。その先に「ああ、生きててよかった」と思える社会が必ず待っています。(さいばら・りえこ=漫画家)

ソース元 http://www.asahi.com/special/ijime/TKY201208040635.html

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この文章が面白いのは、本題であるいじめ“の土俵でいじめを語るのではなく、旦那さんの戦争体験という土俵に持って行き、いじめを語っている点です。
もし、「いじめはよくない、その理由はね・・・」と続き、いじめの土俵から離れず語っていたら、ここまで面白くはなかったと思います。

このように「面白い」と思ってもらえる文章を書くには、本題から離れた場所で本題を語る必要があるのです。
つまり、【面白い話=本題×(  )】という方程式になります。


70年前に書かれ、今でも世界中で売られている書籍『アイデアの作り方』(著者ジェームス・W・ヤング)に、有名な一文があります。「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」。
既存を本題に置き換えれば、上記の名言がそのまま文章でも活かされることにお気づきでしょうか。

この()に当てはまるものは、私が探した限りでは、全部で3パターンあります。
これらを今から、一つずつ紹介していきます。



1、本題とは直接関係のない経験から語る
何かを語るとき、どこかで寄せ集めた情報だけではなく、自身の経験も一緒に語るほうが説得力もリアリティも増します。また、経験したからこそ語れる話もあるはずです。

誤解して欲しくないのは、ここで言う経験とは、本題の内容に関する経験を指しているのではありません。本題の内容とは直接的に関係はないが繋がりがある経験を指しています。
先ほど紹介した西原さんのコラムのように、いじめの話に旦那さんの戦争体験を繋げることが大事なのです。



2、他の世界から語る
先ほど事例で紹介した『もしドラ』がこれにあたります。
「ドラッカーのマネジメント本」と言えば、経営者向きのビジネス書であり、どうしても堅苦しいイメージが付きまとっていました。それを高校野球部のマネージャーという全く関係のない世界から紐解いたことで、斬新かつ分かりやすく解説することができ、マーケットを大きく広げることに成功したのです。
「○○(他の世界)から見た△△(本題)」と考えてみると、今までにない切り口が見つかるかもしれません。



3、目線を変えて語る
『誰も守ってくれない』という映画をご存じでしょうか。
罪を犯した息子のいる家族にフォーカスした映画です。私はこの映画をDVDでレンタルしたのですが、パッケージを見ただけで「これは面白い映画だ」と思いました。その理由は、目線を変えているからです。

通常、犯罪をテーマにした映画や物語は、被害者側にフォーカスします。しかしこの映画は犯罪者側、それもその家族にフォーカスしました。
犯罪という題材はよくあるテーマですが、目線が今までと異なっています。このように主役を変え、目線を変えてみることで、今までと違った真実が見えてきます。


ちなみに、
もし、ドラッカーのマネジメント本をこのやり方でアイディアを出すとしたら、ありきたりな社長やリーダーの視点ではなく、社員の目線で語ってみるのも面白いかもしれません。たとえば、『社員食堂から見たドラッカーのマネジメント』などとか。


簡単ではありますが、「面白い」と言われる3つのパターンを紹介してきました。


ここではお話しできませんでしたが、ほかにも「面白い(可笑しい)」と言われるパターンがあります。たとえば、「恥ずかしい話」「失敗談」「危機一髪」「エッチな話」「冗談」「怖い話」などがそうです。
真面目な話では使えませんが、ウケを狙う文章を書きたい際は、何かのヒントにしてみてください。







アウトプットとは、どう表現するかです。
話を伝えるにも、伝え方はいくつもあります。また、表現の仕方も無数にあります。

一言で『文章』と言ってもその形は様々です。
たとえば、詩、俳句、エッセイ、ポエム、小説、論文、デザインコピー、プレスリリースなど多種多様です。

小説が書けるからと言って、プレスリリースが書けるわけではありません。
サッカー選手はサッカーのプロであっても、野球のプロではないのと同じです。ただし、スポーツにしても文章にしても、基礎体力というものがあります。それは共通して使えるものです。文章で言えば、正しい文法を知っていることや語彙が広いことがそれにあたります。

ジャンルによって使われる技法は異なります。
小説では、レトリックや慣用句は多用されますが、論文ではあまり使われません。もしろ、論文でそれらを使えば、かえって煩わしくなり、説得力が欠けてしまいます。

文章の世界は、一生を費やしても学びきれません。
そのため、自分が日常使うジャンルや書きたいジャンルは何なのかを見極め、優先順位をつけてアウトプットを学んでいくのがいいでしょう。


アウトプットについて詳しく述べていたら、一冊の本になってしまいますので、このページ内で解説するのは控えることにします。しかし、本サイト内では、アウトプットに必要な技法について詳しく述べています。
もし、技法などを詳しく知りたければ、ぜひ、本サイトを隅々までご覧ください。今の私がお伝えできる情報を出来る限り載せています。


長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。