■言葉一つで概念(意味)を変える


弊社の決算月が近づき、節税のために備品や消耗品などを買い漁っていたら、預金通帳の桁が一つ減り、少し憂鬱になっている今日この頃。

さて、今回は「言葉」の魔法についてお話ししたいと思います。

先ほど私は「預金通帳」という言葉を使いました。
みなさんはもしかして、“銀行にお金を預けている”と認識していませんか。正確に言うと私たちは“銀行にお金を貸している”のです。銀行のビジネスモデルは、みなさんから借りたお金を国債や企業に投資して利息を得るものです。その投資資金を預金者から集めているわけです。


「預金通帳」「預金者」の言葉は、まさに魔法です。
なぜなら、私たちに「お金を貸している」という認識(事実)をすっかり忘れさせてしまっているからです。これが意図的なのか、偶然なのかはわかりません。ただ、銀行はその恩恵にあずかっています。恩恵とは、“無担保でお金を借りられる”ことです。


私たち商人が銀行からお金を借りる際、銀行は必ず「担保、なければ保証人を立ててください」と条件を付けてきます。私たちは、渋々、担保ないしは保証人を用立ててお金を借ります。これが日本における“お金の貸し借り”の常識です。


ですが、私たちが銀行にお金を貸す際、「担保、または保証人を立ててください」と条件を出したことがありません。いや、そもそも、担保が必要などと考えたことすらなかったはずです。なぜなら、すでに言葉の術中にハマっているからです。
「預金」という言葉の魔法により、私たちはお金を貸しているのではなく、預けていると認識しています。そのため、銀行に担保などを用立ててもらおうなどと露程も思いません。


本来であれば、私たちが銀行にお金を貸す際、「担保を用意して」と条件を出しても論理的には間違っていません。ただ、銀行が相手にしてくれるかどうかは「額」次第かもしれませんが……。

言葉にはイメージや概念自体を変える力があります。これを上手く活用すればビジネスにも大きな影響を与え、ときには市場を生み出すことさえあるのです。銀行の話は、言葉の力により自分たちに都合の良い環境を作った事例です。

言葉には、国民全員の意識を変えるほどの魔力があるのです。