■読者の気持ちを読み取り、文章を書く


読者から文章を褒められることがあります。
その多くは、 「深い」や「面白い」です。どちらも「分かりやすい」の土台の上にある褒め言葉です。分かりにくかったら、深いとも面白いとも思わないはずです。

前にも書きましたが、私が一番気をつけているのは分かりやすく書くことです。難しい話を分かりやすく書いて、それが伝わった時は、「ヨシッ!」って思います。

もちろん、伝わらないこともあります。
私が伝えたいことを勘違いして受け取っている人を見たときは、「あ〜、伝わってないなぁ。どこがいけなかったのだろう」と反省し、同時に少し落ち込みます。

伝えたいことが伝わらなかったのは、すべて書き手の責任です。私はそう考えています。

現実的なことを言えば、100人読んで100人とも同じ受け止め方はしません。伝えたいことが伝わらない人も出てきます。だから本当は、致し方ないことです。それでも私は、100人全員に伝えたいことは伝わるようにしたい。不可能だと分かっていても、それを目指したいです。伝える側の人間は、これぐらいの気持ちでなければいけないと思っています。


伝えたいことが伝わる文章。物書きとして越えねばならないレベルです。それが出来たうえで、文章に遊び心が入れられます。
分かりやすい文章に隠れて、深い意味のある言葉を書く。「分かる人だけ分かればいいよ」という具合に。
喩えて言うなら、子供から大人まで楽しめる映画のようなもの。子供向けに分かりやすく作っているが、実は大人にだけに伝わる表現も隠れている。そんな感じです。

それが伝わったとき、読んだ人は「深い」「面白い」とコメントを残してくれます。中には、どう受け止めたかを述べる人もいる。そんなコメントを頂いた時、「おっ、分かってくれましたか! あなたやりますね」と思います。なんだか、読者と秘密のコミュニケーションをしている感じです。

分かりやすく、そして深く。 行間に想いや本音を隠して読者に届ける。それができると、読み手も書き手も楽しくなります。書く人と読む人は、文章を通じて、顔を合わさずにコミュニケーションをしているわけです。受け手のレベルが高ければ、書き手はレベルの高い内容が書けます。会話と同じです。

文章(言葉)は、コミュニケーションツールです。書き手が伝える文章は同じでも、読者のレベルによって受け止め方は異なります。ただそのまま受け止める人もいれば、行間を読む人もいる。基本は、そのまま受け止める人向けに文章を書きます。それでいて、深く読みとれる人には、行間を通じてメッセージを伝えます。

それが「分かりやすい文章」の一歩上を行く文章なのだと私は考えます。



TOPページへ戻る