■文章力を鍛えたければ、量稽古をしてはいけない



SNSをはじめとして、文章を書く機会が増えてきました。自身の考えや想いを言葉で表現できる人は、ビジネス上有利です。このことには誰もが気づいており、文章力に関するニーズは年々高まりを見せています。書店には「文章の書き方」に関する新刊が毎月のように並びます。まるで、ニーズの高まりを象徴するかのようです。

手前味噌ですが、私はしばしば「文章が上手ですね」と褒められることがあります。また「どうやったら上手くなりますか?」とも訊ねられます。そのたび私はこう助言します。「一つひとつの文章を丁寧に書いてください。それで完成するスピートが遅くなっても構いません」と。大抵、「えっ、量ではなく質を意識するのですか?」と驚かれますが、私は「はい。質を意識してください」と返します。

「量は質へ転化する」と言われていますが、間違いです。考えてみてください。たとえば、野球を始めて間もない人が、基本的なフォームもよく分からずに素振りをしてバッティングが上手くなるでしょうか? なりませんよね。まずは、基本となる正しいフォームを意識して、一つずつ丁寧に素振りをするほうが上達します。量稽古は、基本が身に付いてからです。

文章に置き換えてみましょう。正しい文法や構成も分からず、支離滅裂な文章をいくら書いても、駄文に毛が生えた程度にしか上手くなりません。それよりは、正しい文法や構成を意識しながら書いたほうが早く上達します。基本ができたら、後は量稽古です。量をこなすほど質が向上します。

これは他の業界でも通じる話です。
先日、プロカメラマンに質問しました。「初心者の撮影技術を高めるには、たくさん撮ればいいのでしょうか?」。彼は答えました。「初心者は量ではなく、質を意識しないと駄目です」。理由は私と同じでした。

まずは「基本」です。基本ができてこそ、量稽古が活きるのです。
あなたの分野でも通じるところがないか、一度考えてみてはどうでしょうか。



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